「もっと欲しい」「まだ足りない」。そう思い続けているうちに、気づけば心だけが忙しくなっている。 カン・ヨンスさんの『求めない練習』は、絶望の哲学者と呼ばれたショーペンハウアーの思想を土台にしながら、「幸福とは、手に入れることではなく、手放すことから始まるのではないか」と静かに問いかけてくる一冊。本書が語るのは、前向きな夢や努力を否定する話ではない。むしろ、求めすぎて疲れてしまった現代人の肩を、そっと下ろしてくれる哲学だ。私は何度も心の中でひとりツッコミを入れた。「ああ、また私、求めすぎてるな」と。そんな小さな気づきが、日常を少しだけ軽くしてくれた。