コミュニケーションにおいて「相手を否定しない」という態度は、単なるマナーではありません。それは、信頼関係を築き、組織やチームを前進させるための必須スキルです。林健太郎氏の著書『否定しない習慣』は、コーチング現場で得た実践知に基づき、無意識の否定が生まれる構造と、否定せずに対話する技術について詳しく解説しています。本稿では、ビジネスパーソンが今こそ身につけるべき「否定しない力」について、要点を整理しながらご紹介します。イラスト:Image by pikisuperstar on Freepik

なぜ、無意識に相手を否定してしまうのか?

ビジネスの現場では、
スピーディーな意思決定や問題解決が求められます。

そのため、つい「非効率な提案」や「現実的でない意見」に対して、
即座に否定的な反応をしてしまいがちです。

しかし、林氏は本書で、
「否定とは自己防衛本能の表れである」と指摘します。

 

人は、自分が理解できないもの、
自分の経験則にないものに対して無意識に脅威を感じ、
それを否定することで自己の安定を保とうとする傾向があります。

この防衛反応は、
個人レベルでは安心をもたらすかもしれませんが、
組織においては新しい発想やイノベーションを阻害する要因にもなり得ます。

否定が常態化した環境では、
部下やチームメンバーはリスクを恐れてしまいます。

また、本音を言わなくなり、
結果として組織の成長は鈍化してしまうのです。

まずは「なぜ自分が今、否定したくなったのか」を、
冷静に見つめる意識が求められます。

「否定しない」とは「同意する」ことではない

「否定しない」と聞くと、
すべての意見に無条件で、
賛成しなければならないと誤解されがちです。

しかし、林氏は「否定しない」とは「一旦、
相手の意見を受け止めること」だと明確に定義しています。

たとえば、部下が「新規市場に挑戦したい」と提案してきた際、
リスクばかりを指摘するのではなく、
まずは「その発想に至った背景」や「本人なりの仮説」を聞き出すことが重要です。

 

相手の意図を深く理解した上で、
必要に応じて建設的な意見交換を行う―
―これが「否定しないコミュニケーション」です。

この姿勢をとることで、
相手は「受け入れられた」という安心感を得ると同時に、
自ら思考を深めより現実的なプランを描くようになります。

結果として、
チーム全体の創造性と主体性を引き出すことにもつながるのです。

否定しない」を実践するための具体的スキル

では、どのようにして、
「否定しない習慣」をビジネスの現場に取り入れるべきでしょうか?

林氏は、誰でも実践できるシンプルな方法を紹介しています。

 

-「オウム返し」テクニック

相手の発言をそのまま、
または少し言い換えて返すことで、
無意識に否定するリスクを回避します。

例:「今期は海外展開を狙いたい」→「海外展開に挑戦したいと考えているんですね」

 

「10秒間、相手の立場に立って考える」

発言を受け取った直後、
すぐにコメントしないこと。

10秒間だけ、
「自分がこの立場だったらどう感じるか」を想像してみます。

この短い間を置くことで、
反射的な否定を防ぎ、
より建設的な応答が可能になります。

 

-「問いで返す」アプローチ

否定する代わりに、
「どのような課題が想定されますか?」
「具体的にはどの市場を狙っていますか?」と、
質問を返す。

これにより、対話を深めつつ、
相手の思考を促進できます。

これらのスキルを繰り返し実践することで、
自然と「否定しない」対話スタイルが身についていきます。

今回のまとめ

否定しないコミュニケーションを、
組織全体に浸透させることは、
単なる「雰囲気づくり」以上の意味を持ちます。

意見が自由に交換され、
異なる視点が尊重される環境では、

・新規事業のアイデアが生まれやすくなる
・課題の発見が早まり、対応力が向上する
・メンバーのエンゲージメントが高まる

といったポジティブな連鎖が生まれます。

 

また、上司と部下、チーム間、
さらには顧客との関係性においても、
相互の信頼と共感が深まり、
ビジネスの成果に直結していきます。

『否定しない習慣』は、
単なる個人のマインドセット改革にとどまりません。

それは、これからの時代を生き抜くための、
組織全体の「対話力」強化に直結する考え方でもあります。

まずは一人ひとりが、
目の前の一つひとつの会話から、
「否定しない」を意識してみること。

その小さな積み重ねが、
やがて大きな成果をもたらすはずです。

いかがでしたでしょうか?

最後まで読んでくださりありがとうございます。

少しでもヒントになればうれしく思います。