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まだテレアポに飛び込み訪問営業なんてしてるの?
SB新書「営業はいらない」(株式会社日本創生投資代表取締役CEO三戸政和著)。この本の帯にはあの堀江貴文氏の推薦文と、「20年で100万人の営業マンが消えている」と少々ショッキングなサブタイトル。裏表紙のあらすじだけでもこの本の説得力がさらりと感じられます。
「私は10年後には営業という概念がなくなっていると確信している」と、
著者の三戸政和氏は断言している。
10年後なんて目と鼻の先だ。
いまだに多くの企業が、新規顧客獲得のファーストコンタクトを「飛び込み営業」と「テレアポ」に頼っている。しかしそのテレアポの成功率は1%以下だ。人口減少の今の時代、世界はテクノロジーを活用しつつ「営業不要」で成功し始めている。
引用元: 営業はいらない
営業不要とは具体的にどういうことなのか?
企業や営業マンは何を目指すべきか?
いくつも疑問がよぎります。
サラリーマンの不幸
本書の続きには、「郵便局の保険押し売り」に地銀の”優等生”と言われた「スルガ銀行の不正融資」、情報漏洩など相次ぐ不祥事であえぐ「ノルマ証券と揶揄される野村証券」と問題提起。
「サラリーマンの不幸の根底には”営業”がある」と直球勝負の指摘から始まります。
引用して一部ご紹介します。
ノルマを達成できない郵便職員には「恫喝研修」に「懲罰研修」のパワハラ研修が待っている、「お前らここにきて恥ずかしくないのか!」と1時間にわたって教官からなじられる。
いずれにせよ共通の問題は「ノルマ」の問題。
スルガ銀行の不正融資問題について第三者委員会が行ったアンケートもショッキング。
- 「数字がだせないならビルから飛び降りろ!」と言われた。
- モノを投げつけられ、パソコンをパンチされ、「お前の家族を皆殺しにしてやる!」と言われた。
上司の締め付けが厳しいと知られている野村証券も、
- ノルマが達成できなければ、上司に殴られるのは当然。
- 成績の上がらない課長代理とその奥さんが応接室に呼び出され上司から厳しく叱責されていた。
だれもが知っている有名企業でさえこのありさま、21世紀のこの時代にもかかわらずまさに”ブラック”の様子が浮かび上がります。「サラリーマンの不幸の根底には”営業”がある」と気の毒なことだと思う。
日本企業のこうしたありさまに呆れてしまうというわけであります。
ノルマを課せば業績は上がるの!?
素朴な疑問です。
- 恫喝研修に懲罰研修をして営業マンは生き生きと成長するのでしょうか?
- 部下を必要以上に締め付けて業績が上がるのでしょうか?
- パワハラ指導で営業マンもその家族もそして顧客も幸せなのでしょうか?
- 気合と根性と押し売りで業績が好転すると本当に信じているのでしょうか?
他に方法はないのでしょうか?
しかし驚くべきことだが、郵便局やスルガ銀行の例を見てもわかる通り、この前近代的にも思われる「ノルマ」は、決して過去のものではない。
2019年4月、コンサルティング会社であるアタックス・セールス・アソシエイツが発表した「日本の営業実態調査2019」では、46.1%の営業マンが「昨年度のノルマを達成できなかった」と回答した。半数近くの営業マンがノルマを達成できていないという点からも、今なお、多くの企業で無理なノルマを設定し、組織として圧力をかけながら営業活動を行っていることがうかがえる。
ノルマという昭和の遺物は、平成を越え、令和の時代もいまだに残り続けているのだ。
引用元: 営業はいらない
あの堀江貴文氏がこの本を推奨されています。その帯には、「最も大事で最も必要ないもの、それが営業ということだ」と。なるほど、その一言にこの問題の本質があるようです。
本来の”営業”という仕事は価値も魅力もある職業のはず。
誰も得しない営業手法
どうしてノルマと不祥事の弊害が、多くの営業マンを抱える大企業で延々と続いてしまうのでしょうか?本書の結論は明確であります。
それは、「大量生産大量消費の古いビジネス体質のまま、変革をすることができないからだ」と。
その為、引き続き過剰な営業マンを抱えたまま、なんとしてでも売上確保に走ろうとしているからにならないと。今やネットの社会。営業マンの人件費を抱えることなく成果をあげていく時代。
だからといって過剰に抱えた営業マンを切り捨てるわけにもいかず、新しい時代のビジネスモデルになかなか変革できぬままの無理がブラックを助長させるというわけです。無理な営業の先には迷惑を被る顧客がいる。顧客側も無理な煽り売りを嫌い、売る側も無理を承知でまた無理をするという悪循環。
膨大なコストをかけては、誰も得しない営業手法を続けているという現実はあまりにも悲しい。
営業担当者のメンタルに与える影響は深刻
無理な煽り営業の特に新規顧客獲得はさらに非効率。どうしても「飛び込み営業」や「テレアポ」に頼るものの、その成功率は1%以下だと指摘されていた。
とならば営業担当のモチベーションは、下がるだけでなく心も体も疲弊していく。
飛び込み営業やテレアポ担当者のメンタルに与える影響も深刻だ。これらの営業活動は精神的な負荷が非常に大きく、ほとんどの人が短期間で値を上げる。中には心が痛んでしまう人さえいる。櫃伝的に人員は使い捨てとなる。
飛び込み営業やテレアポといった営業行為については、「される側の79%、する側の74%が「無駄である」と感じている」というデータまでがある。
引用元: 営業はいらない(P42)
まさに、無駄と無理のオンパレード。
こうした営業活動について本書では、「”1の利益”を得るために”99の不利益”をまき散らしている」と断言しているのです。
営業不要で成功している!?
さて、営業なくしてどうして売り上げを確保できるのでしょうか?そんな優れた方法があるのならとにかく教えて欲しいものであります。ところが、もはや世界は営業不要で成功しはじめているというのです。本書をさらに追ってみます。
具体的にどういうことなのでしょうか?
トヨタの焦り、日本企業の焦り
三戸政和氏は本書の中でアメリカの自動車産業で全米1位に躍り出た企業、「テスラ・モーターズ」社を営業不要で成功している企業としてピックアップしていました。
あのGMを抜き去っての快挙です。
エネルギー効率がよく、二酸化炭素排出のない環境にやさしい自動車が、”いまどき”だからではなく独自性ある「戦略」にその要因があるというのです。
テスラ社は自動車メーカーではあるが、ディーラーを持たない。メーカーが直接販売するから、中間マージンはいらない。ディーラーによる営業があるからこそ車が売れると思い込んでいる従来の自動車業界、その点直売システムを採用してインターネット販売に全面的にシフトしたのであります。
これに比べて日本のメーカーに対して問題視をしています。
大量生産型の企業にとって、生産量は増やすというのが生命線である。生産量を増やすことで製造コストを下げ、利益を確保し、さらに企業規模を拡大してきたからだ。そんな大量生産型の日本企業の多くが採っていた戦略の一つが、次のような単純な「足し算型の戦略」だった。
- 機種の数を増やす
- 機能を積み増す
日本の大規模メーカーの中には、この「足し算型の戦略」を採ってきた企業が多い。日本は自動車業界のみならず、家電業界もこれが顕著だ。
引用元: 営業はいらない(P65)
さらに、テスラ社は「車を買いやすい価格で提供するためには、小売部門の社員数を減らす以上の策はない」。営業マンを必要とせず「感動体験」を通じて、体験を経験した顧客は押し売りされずとも自らテスラ社の製品情報を取りに行く。そしてこの顧客が口コミを拡散。
だからテスラ社には営業など不要となると紹介されています。
御用聞きのルート営業マンからテクノロジー営業へ
ここに「モノタロウ」が登場します。ホームセンターへ出向くか卸業者の営業マンと取引するしかなかった商品を、「ほしいモノがすぐ手に入る」というシステムを作り上げた”モノタロウ”。モノタロウを使えばそこそこの安さで豊富な品が手に入る、なによりも注文から発送までがとにかく早い。
ネジ1本からすぐ届けてくれるのだから、まさに営業マンは必要ないのであります。
さらに、営業の代表格「MR(医薬情報担当者」もテクノロジーに、急速に置き換えられていると紹介しています。医薬品だけに販売は極めて専門性が高く複雑で広範囲な知識が必要で、使用時のリスクも考えると人をかいしてじっくり説明を受けた方がいい。
それですらインターネットに採って変わっているというのです。
「MR君」は、日本最大級の医療情報専門サイト「m3.com」等を運営するエムスリーによって提供されているもので、従来はMRから医薬品を購入していた医師の動きを、Web上に代替え下サービスである。
(中略)
現在、エムスリーが展開するサイト「m3.com」を利用する医師は28万人で、国内の医師の約割にのぼる。このサイトを通じてMR君を利用する医師も増えているため、今や製薬会社の営業活動にMR君は欠かせない存在となっている。
引用元: 営業はいらない(P103)
営業はどこへ向かうのか?
とはいえ、地方や中小企業ではまだまだ営業なくてはと考える経営者も多いはずです。やっぱり人と人のコミュニケーションから生まれるつながりは強く、モノや情報はそれらの信頼からとそうそうテクノロジーには置き換えられないと信じてやまないと。
はたして、「営業はいるのかいらないのか」、本当はどちらなのでしょうか?
時代が違う
携帯電話の登場に声も文字も動画もコミュニケーションに使えるようになってきた。インターネットで会議ができる時代であり、5Gになれば遠隔操作で作業もできるというではないか。日常生活でもツイッターやフェイスブックで容易にコミュニケーションは生まれるし、なにしろアマゾンで発注すれば翌日に届く時代であります。
三戸政和氏は「ホスピタリティもAIに置き換わる」と断言しています。
『営業マンが持つべき”ホスピタリティ”はテクノロジーに置き換わりやすい考えている。すでにお話しした通り、私の住むマンションを運営しているのは、ホスピタリティの分野では世界的に評価の高いホテルの一つである』。
車寄せを止めればドアを開けてくれるし、マンション入口の自動ドアも、手を添えて開けてくれる。手紙やクリーニングを出すときにはコンシェルジェに預けるだけでいいし、頼めば部屋まで取りに来てもくれる。また、誕生日には、スタッフ全員が「お誕生日おめとうございます」と声をかけてくれる。
「これこそ人の温かさ、ホスピタリティだ」。多くの人はそう思うかもしれない。しかし冷静に考えてみてほしい。この中で、テクノロジーに判断できないサービスが存在するだろうか。(中略)むしろコンピューターの方が適切に処理してくれるだろう。
引用元: 営業はいらない(P130)
具体的なセールステクノロジー
日本の営業マンの場合に本来集中しなければならないのは顧客サービスなのに、実際には無駄なことに時間を費やしているというのです。無駄な時間というのは事前の準備にやたら時間を使ってみたり、終れば終わったで報告書を作成するのに四苦八苦。
毎日のように営業ミーティングが行われ、そのたびに気合と根性を確認されるのだ。
アメリカは違う、効率よく顧客サービスに徹する。営業セールステクノロジーはその支援のためにある。主には、MA(マーケティングオートメーション)、SFA(セールスフォースオートメーション)、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)など。
- MA・・・マーケティング業務の一部を自動化するツール
- SFA・・・営業活動の一部を自動化するツール
- CRM・・・カスタマーサポートやアフターサポートの一部を自動化するツール
アメリカではかなり精緻に営業プロセスの管理がなされている。ターゲットリストの作成、電話やメール、アポイント、提案、交渉、受注というプロセスに分け、それぞれのプロセスごとに対応するスタッフが変わる。
簡単に言えば、MA、SFA、CRMといったツールは、その営業の各プロセスにおいて、人の関わりを極力排除し、自動化するものである。だから、自動化された部門の営業マンから先に職を失っていくことになる。
引用元: 営業はいらない(P111)
こうなりますと営業に管理職はいらなくなるのです。
進捗報告や方向性を確認する会議や上司の一言もいらない、据えての商談をAIが把握し報告業務からそれを受けての進め方のアドバイスまでシステム上でできる。ここには精神論や根性論が含まれた無駄な営業会議も、上司のパワハラな叱責も一切不要となるというのであります。
デジタルインサイドセールス――最新テクノロジーによる法人営業改革の実践
営業マンはどう生きたらいいの?
「営業」自体がなくなるのであるならば、営業マンはどう生きていったらいいのでしょうか?著者は第4章と第5章でいくつかのヒントを挙げています。
(営業マンはどこへ向かうのか?)
- セールステックを使いこなしみずからセールスの成果を底上げする。
- セールステックを使いこなすセールスの指揮官になる
- 営業職から離れ自ら戦略を立てられる新たな地位に就く
- 営業マンは経営者に向いている
- 自分が勝てる池を目指せ
- ファンを生み出せ
- 少数精鋭型の「小商い」のすすめ
推薦帯に係れていた堀江貴文氏の
「最も大事で、最もひつようないもの、それが営業ということだ」
とあります。
社員ゼロ! きちんと稼げる「1人会社」のはじめ方 (アスカビジネス)
これは三戸政和氏は言葉を変えて説明してくれています。
「営業ができる人はなんでもできる。でもそれがゆえに、その能力を惰性で浪費するのでhなく、自分の人生のために最大限活用して欲しいというのが本音である」と。
私の感想
おかげさまで私は若いころから、優れた経営者に出会う幸運に恵まれました。「数を追うな、追えばろくなことはない」「数字は後についてくる結果にすぎない」「顧客を喜ばせた分その結果が数字に表れる」と、当然ノルマもなければ追っかける数字も個別に持たせない。
ただしお客様の声、エピソードを大事にせよと教えられたものです。現場の人間として私もその教えの通りに振る舞い、この経営者に換わってからは業績も顧客の声も変わっていく様を体験した一人でありました。
未だに解消されないブラック企業などのあおり営業や、恫喝研修に懲罰研修などノルマの悪影響にその場にいる方々が気の毒に思えてなりません。そんなことのために自分の人生を使って欲しくもないし、そうあってはならないと信じてやみません。
「営業はいらない」三戸政和著は、非情に考えさせられおおいに参考となりました。
(marusblog記事紹介)
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今回のまとめ
営業はもはやいらないが、営業マインドはビジネスを行う上で一番大切なことである。著者の言葉は重たい。「ひとまずやってみる」「決めたことは何があってもやりきる」「恥じず臆さず人とコミュニケーションをとる」「拒絶されてもへこたれず次への歩みを進める」、どれをとても重要なことだと。
無謀なコスト、無駄な時間、ムリな行為をやめるのです。だから堀江貴文氏の推薦帯の言葉がズバリ的を得ているのです。「最も大事で、最も必要なもの、それが営業ということだ」と。しかし「営業はいらない」のです。
営業マインドを大切にしテクノロジーを使い込み、コンパクトで効率的でスピーディな営業戦略を創造する。「日本だからこそ得られるチャンスがある」と著者の言葉が今回ご紹介の著書の結論に思われます。
クリエイティブな仕事をこなせる顧客に愛される営業パーソンを目指したいものであります。
いかがでしたでしょうか?
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