2020年6月1日は”パワハラ防止法”が施行となりました。これによって、パワーハラスメントの定義が定められ、企業にパワーハラスメント(パワハラ)の防止を義務付けられることになりました。最近では、もうセクハラとかパワハラとか違和感もなく普通に使われるようになってきました。それだけハラスメントに悩む人も多いということのようです。パワハラの内容が悪質な場合は企業名の公表も検討されているとも。パワーハラスメント(パワハラ)についてあらためて整理してみました。

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そもそもパワハラって!?

職場では上司の指示や判断に基本的には従うものであり、少々厳しいこと言われたところでそれ自体がパワハラにはならないはずです。上司や先輩の立場であれば指導や指示を「それってパワハラですよ」と言われて、エッと思ったことはありませんか?「この程度でパワハラなんて」「自分が若い頃は毎日どなられていたのに」、なんて正直思うこともあるはずです。

パワハラか否かの線引きはどこにあるのでしょう?

パワハラの定義

厚生労働省では平成24年3月に「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」が、「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」で取りまとめられたとあります。都道府県の労働局にこの問題の相談が増加傾向にあったことからだと。

ここに職場のパワーハラスメントの定義が定められています。

職場のパワーハラスメントとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義しました。

この定義からパワハラの線引きが見えてきます。それは、上司から部下に対するだけでなく、職務上の地位や人間関係の優位性を背景にとその範囲は広いということ。また、業務上必要な指示や注意、指導が行われている場合はこれに該当しないこと。

「業務の適正な範囲」を超えるという点が線引きになるようです。

2020年6月施行のパワハラ防止法とは

こちら改正労働施策総合推進法のもと、職場のハラスメント対策の強化を企業に義務付けたものです。この企業の義務を「パワハラ防止法」と呼ぶということです。パワーハラスメント(パワハラ)の基準を法律で定めたわけで、具体的な防止措置を企業に義務付け職場のパワハラを防ぎなさいと言うわけであります。

 

それだけパワハラに悩む人が多いということでしょうか。

 

職場におけるパワハラの定義や防止措置について参考サイトを引用してご紹介します。

現在このパワハラ防止法の罰則は設けられていません。それでも厚生労働大臣が必要と認めた場合などは、企業に対しての助言や指導、勧告などが行われるということです。

 

ただし、勧告に従わない場合はパワハラ防止違反となる可能性はあるという点は企業側も注意が必要となるようです。

【パワハラ防止法に定められた義務】

  • 企業の「職場におけるパワハラに関する方針」を明確化し、労働者への周知、啓発を行うこと
  • 労働者からの苦情を含む相談に応じ、適切な対策をこうじるために必要な体制を整備すること
  • 職場におけるパワハラの相談を受けた場合、事実関係の迅速かつ正確な確認と適正な対処をおこなうこと
  • このほかにも、プライバシーの保護のために必要な措置を講じることや、パワハラの申告を理由に、労働者の解雇や不利益な取り扱いをしないことなどが企業に義務化されます。

 

【パワハラの判断基準】

  • 優越的な関係を背景とした言動
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
  • 労働者の就業環境が害されるもの

6つの類型

さらに参考サイトや厚生労働省サイトを確認すると、パワハラにあたる行為として具体的に6つの類型に分類されています。

 

こちらも確認しておきたい項目です。

上記で定義した、職場のパワーハラスメントについて、裁判例や個別労働関係紛争処理事案に基づき、次の6類型を典型例として整理しました。

なお、これらは職場のパワーハラスメントに当たりうる行為のすべてについて、網羅するものではないことに留意する必要があります。

1)身体的な攻撃(暴行・傷害)

2)精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)

3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)

5)過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

6つの類型のうち1)身体的な攻撃については言うまでもなく、暴力は当然パワハラだとわかります。ところが分かりにくいのがその後の(2~6)のようです。部下を指導や指示する時に「君って何やってもダメだね・・・」なんてたとえ半ば冗談で言ったつもりでも、受ける側はその言葉がショックで傷ついてしまうとなれば人格を非難しているとなってしまう。精神的な攻撃となってしまうということです。

 

これって上司と部下、先輩と後輩などの人間関係によって変わってきますよね。

 

セクハラもそう、受けるが側がどう受け止めるかってことになります。良好な人間関係とか信頼関係がある・なしで、同じ言動や行動がハラスメントになってしまうという点も認識しておきたいところであります。それにしても、人間関係からの切り離しとか過大・過少な要求とか、個人のプライベートに過度に立ち入るなんてのはまさに「いやがらせ」。

 

こんな上司にはなりたくないものです。

上司以外でも同僚でも

パワハラは一般的に上司から部下への行為と受けとめられがち、でも職務上の地位や職場の優位性といった人間関係のパワハラもけっこうあります。

 

(地位や優位性など人間関係によるパワハラ例)

  • 古参の社員が気に入らない新入社員を仲間外れにするとか・・。
  • ベテラン社員がなかなか覚えない新入社員を罵倒するとか・・。
  • 有能な社員が他の社員をバカにしてしまうとか・・。
  • 気の弱い上司を部下全員で無視するとか・・。

などなど・・・。

 

こちらも実際の職場であちこちでありますよね。上司じゃなくとも人に対していじめやバカにするような言動や行動、これらすべてもパワハラにあたる可能性があるということです。

 

人間関係のパワハラ、こちらも認識を持って気をつけたいものです。

業務の適正な範囲

なんでもかんでも叱られたり注意されたらパワハラになるかというと、そういうわけではありません。パワハラの定義にありますように「業務の適正な範囲」であれば、逆にそれは適切な指導・注意であるわけです。この「適正」というのが少々煩わしいところ。

それでも冷静に考えてみるとわかってくるようです。

 

(適正をこえるケース)

  • 一度言えば十分わかることを何度も繰り返して叱り続けたり。
  • 長時間にわたって同じことを叱責したり。
  • 相手の人格を否定することをネチネチと言い続けたり。

 

これらは明らかに「適正」の範囲を超えている、すなわちパワハラとなります。逆に注意する方受ける方、叱る叱られるも適正で必要であれば、パワハラとは言えないということ。

 

パワハラのラインは「適正」の範囲を超えるかどうか、こちらもしっかりと理解しておきたいところです。

これもパワハラ

「契約を取ってくるまで帰るな!」「成績が悪いお前は給与ドロボーだ!」と、罵声を浴びせさせるなんてちょっと前の日本だったら日常茶飯事。でも今では「人権問題」になりかねない。まさに時代です。

 

よくありそうなのが執拗にプライベートのことを聞いてくる上司。好きな男性のタイプとか彼氏いるのなどなど。個別にメールやLINEなんかを送ってくるとかというのもありあり。特に女性に対するこうした行動。

実はこれ、断れないという状況での侵害行動もれっきとしたパワハラになるというわけです。セクハラ?かと思いきやパワハラになるのです。

 

パワハラ、セクハラから、マタハラ(マタニティハラスメント)にアルハラ(アルコールハラスメント)などもあります。いずれにせよこちらがどう思うかではなく、相手がどう受け取るかということです。

 

「人権問題」なんて、けして大げさではないんです。

なぜパワハラはおきるのか!?

厚生労働省の実態調査によると労働相談の多くが減少または横ばいという状況の中、いじめ・嫌がらせといったパワハラ相談だけが激増し続けているとあります。パワハラは上司から部下といっただけではないとありましたが、それでも上司から部下に対して行われたケースが圧倒的。

 

いったいなぜでしょう?

コミュニケーション不足

パワハラ相談があった職場で最も多かったのは、「上司と部下のコミュニケーションが少ない職場」との調査結果にありました。そもそも部下のことに感心のない上司であったり、数値やクレームなどだけで評価してしまっていたり。

 

部下の努力も知らずに労いの言葉もない。

 

そもそもコミュニケーション不足の職場では、意志疎通がおろそかになるので人間関係にも不信感が沸き起こる。部下に対して「あの仕事どうなってるんだ」とか、「まったく報告もない」なんてぐあい。

部下は部下で「指示された内容がいまいちよくわからない」、「なぜ自分がやらなければならないのか疑問・・」などなど。これではお互い不信感を抱いてしまう。

 

お互いモヤモヤ感が残ったままの状態。

 

そんな時、上司から叱責されたり批判されたりすると、部下は全部を否定されているかのように重く受け止めやすくなるというわけです。ちょっとしたことでも上司の態度や言葉に恐れて、「パワハラ」を受けていると感じてしまうというわけです。上司も忙しく上からのプレッシャーもあり、部下の面倒を見ている場合ではないなんてこともあるかもしれない。とならば組織全体の問題でもあるのです。

 

トップからしてこの問題に手をつけていく必要があるのです。

一方通行の関係

上司が一方的に指示命令を出し、部下が自分の意見や上司と反対の意見を言うことができない雰囲気の職場。

  • 会議はいつも上司だけ発言。
  • 会議でも部下は聞き役で意見は上司に消されてしまう。
  • 上司に相談しても説教で終わってしまう。

なんてぐあい。

 

口では部下の意見を聞くなどと言うくせに、結局、上司自信の意見が否定されることを拒絶してしまう。地位や職歴、職位に専門スキルと経験など、どうしても職場内での自分の優位性を認識しているからこそであります。また、お互いに「あの人のおかげで・・・」などと、自分が被害者であるかのような感情を抱いたままの不信感という場合もあるようです。これじゃぁ上司と部下のコミュニケーションが足りずに、信頼関係は生まれずやがてパワハラと受けとめやすくなるといった悪循環。コミュニケーションの希薄が部下を精神的に追いつめパワハラにつながる。

 

上司の立場の人はよくよく理解して注意する必要となります。

パワハラの連鎖拡大

はじめは些細なことからやがて攻撃がエスカレートし、執拗なまでに繰り返し行われるというケースも多い。部長が課長に対してパワハラを行い状態的になっている職場では、やがて課長が係長に係長が主任へと同じように連鎖していく場合もあるのです。

 

こうしてパワハラの被害が連鎖拡大していくのです。

 

それは上司と部下の関係だけでなく先輩から後輩、または正社員からパート・アルバイトという関係にも連鎖拡大が広がるということも考えられます。こうなると職場は誰でもどこでもどんな関係においてもパワハラが発生し、加害者にも被害者にもなりうるという認識が組織全体にとっても求められるはずであります。

 

当然、組織全体としての対策も講じなくてはならないとなります。

パワハラにどう対処すればいいのか!?

自分がパワハラを受けているのかどうか?まずは、自分の気持ちに素直に向き合い状態を知ること確認することから。我慢したりあきらめたりしてストレスを抱え込まないことだといいます。

我慢し続けない

とはいえ、

  • このくらい耐えなければ
  • 上司だって耐えてきたんだし
  • 耐えられないと弱い人間とレッテルを貼られてしまうと心配
  • 大げさにしたくない
  • 人間関係が悪くなるから言えない

などなど、ついつい我慢してしまうことってあります。

 

先の実態調査の「パワーハラスメントを受けたと感じて何もしなかった理由」では、「何をしても解決にならないと思ったから」が68%以上と圧倒的。

 

あきらめてしまうと泣き寝入りに。

 

実態はなかなかどうして深刻な場合もありそうです。あきらめて我慢して済めばいいのですが、これがストレスを抱え込むことになると心の病へとなることも。

我慢している場合じゃぁない!

 

まずは、「嫌だ」「不快だ」「こわい」といった素直な感じを大事にすること。そして、自分がそう思うことが、パワハラの「6つの行為類型」にあたるかどうかをよく振り返ってみること。

 

専門家はそうアドバイスされてます。

 

そして単発的ではなく継続的にパワハラと感じる行為を受けている受け続けているか?という点がポイントとなります。考えてみましょう!パワハラを受けて嫌な思いを抱えて仕事をすることが働くことでしょうか?決してそんなことはないはずです。実際にパワハラを受けている状態であるとなったら!?

 

問題を一人で抱え込まず相談をすることです。

記録する

専門家のお話しですと「いつ・どこで・どのような行為を受けた」という記録、メモを残しておくことが大事だとアドバイスもあります。継続的な量も問題になりますから、やっぱり記録は必用ですね。ボイスレコーダーで記録もありでしょうし、怪我をしたりしたら写真に残す必要なんてのもあります。

どこに相談するにしても自分の主観ばかりではなかなか理解してもらいにくいもの。

そこで、メモなどの記録で証拠を提示することが、信憑性を高め判断材料となり相談先で動いてもらうきっかけになります。正当な反撃をするためにも冷静に。

 

証拠集めは耐える時期でもあります。

 

絶対にやっちゃいけないのが、頭にきて暴力には暴力とばかりにやり返すこと。また、自分の主観だけでものごとを判断したり、好き嫌いだけでパワハラと決めつけるのもいけない。職場の人間関係やコミュニケーションにお互い足りていないと感じていたとしたら!?

 

みずからそれらを解消する努力も必要であります。

パワーハラスメント対策マニュアル

厚生労働省は「パワーハラスメント対策導入マニュアル」を、パワハラ対策に取り組む企業が参考になるよう解説しています。

参考:パワハラ関係資料ダウンロード

ここには、パワーハラスメント対策の基本的枠組みの構築手順が示されています。

■予防するために

①トップのメッセージ
・組織のトップが、職場のパワーハラスメントは職場からなくすべきであることを明確に示す

②ルールを決める
・就業規則に関係規定を設ける、労使協定を締結する
・予防・解決についての方針やガイドラインを作成する

③実態を把握する
・従業員アンケートを実施する

④教育する
・研修を実施する

⑤周知する
・組織の方針や取り組みについて周知・啓発を実施する

■解決のために

⑥相談や解決の場を設置する
・企業内・外に相談窓口を設置する、職場の対応責任者を決める
・外務専門家と連携する

⑦再発防止のための取り組み
・行為者に対する再発防止研修等を行う

 

実際小さな会社だとなかなか社内で相談も限界があるかもしれません、従業員アンケートといってもなかなか素直に応じられないということもあります。情報が間違ってとらえてしまったり、漏れてしまうことで解決どころか問題が広がるなんてことも予想されます。とならば外部の機関など然るべきところと連携するか、個別に相談という形も必要となります。まずは信頼のおける友人や同僚と相談しながらまずは労働基準監督署などへ足を運んでみる。

 

まずは相談を第一歩にするのもいいかもしれません。

 

具体的な記録を持って相談すればパワハラ、セクハラの問題は社会的な問題でもあるだけに、きっと適切なアドバイスをしていただけるはずです。ストレスを抱えて心の病気にならないことです。

 

自分で抱え込まないようにしたいものです。

何でもパワハラにする部下

こうしてパワハラに対する意識が高まり、実際にはパワハラ問題は少なくなっているのも事実とか。ところがパワハラに関する相談は増加傾向だと言うのです。

 

なぜでしょう?

 

結局、パワハラだと感じているが調べてみると、それがすべてパワハラと認定されているわけではないという現実。パワハラという言葉が独り歩きをして、何でも「パワハラ」という言葉で片づけようとする傾向もあるらしい。

 

分かるような気がします。

 

上司からの指摘に腹を立て、自分の反省は後回しでさきにパワハラだ!と決めつけてしまう。上司に相談するでもなく、勝手に思い込んじゃうという点。

 

部下側の問題もあるわけであります。

 

コンプライアンス厳守や働き方改革など、人で不足も深刻とより複雑な職場環境の変化があります。いつどんな理由でパワハラの被害者・加害者になってしまうか分からない、そんな状況でもあるようです。パワハラに対する冷静な心構え。

 

風通しの良い職場環境がより求められているようです。

私の感想

なにやら企業の負担が増えちゃうように見えるのですが、何となく曖昧でわかりづらかったパワハラも、具体的に定義がされると、これってパワハラ!?という判断の共有ルールができてよりトラブルも回避できるし、パワハラが実際に発生した場合の対処もしやすくなったと前向きに捉えた方がよさそうに思います。会社全体で取組となら相談しやすい人も多くなるでしょうし。

 

防止策もあれば従業員の意識も変わってくるでしょう。

 

上司や部下というだけでなく、先輩や後輩、正社員と派遣社員というさまざまな立場に、人としての優位性なんて全くないという点などは自分もしっかりと理解しておきたいと思うところです。セクハラもマタハラなんかもそういう意味では同じ。そうそう、最近話題の”あおり運転”なんてのもハラスメント運転ですね!

 

気をつけましょう!

 

(marusblog記事紹介)

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今回のまとめ

パワハラの相手は自分よりも立場が上ですし、対会社ってことにもなると表立って声を上げにくいというのもあります。でも、本当にパワハラを受けて悩んでいる状態であるなら、声を上げて当然。

 

そうすることがけして間違っていないと理解する必要あり。

 

どんな理由でも人の尊厳は尊重すべきであり、いじめなんかに遭う理由はないはずであるからです。それよりも責任もって与えられた仕事に専念して、よりいい仕事で貢献をしたいもの。どこの職場でも人間関係がある以上、加害者にも被害者にもなりうるという認識も必要でした。

 

いずれにしても、風通しのいい人間関係と職場が必要のようですね。

 

みなさんの職場ではいかがでしょうか?

 

 

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